主催者不在の、コロナ禍の中での、音楽イベントの作り方
管理が行き届きにくい会場と、自然の脅威
トイレが使えない?!
1月12日、会場となる多世代ふれあいセンターへ行った娘が
「ママ、多世代ふれあいセンターは、水道管が凍結して、今は全館トイレが使えない」
と私に教えてくれました。
直前の週末、西日本の広い範囲を寒波が覆い、宇部で大雪が降ったのです。
その直後は、水道管が凍結して水やお湯が出ない、という話がそこら中に転がっていました。実際、我が家も11日までお湯が出ませんでした。
なので、娘には「また使えるようになったら、教えてね」とだけ、伝えました。
多世代ふれあいセンターは比較的新しい施設です。
お隣にあるボロボロ(失礼!)な福祉会館のトイレは大丈夫なのでそっちを使っている、という話に少し違和感を感じましたが、17日まで暖かい日が続く予報だったため、あまり深く考えていませんでした。
14日。出演者とA氏との、顔を合わせての最後の打ち合わせがありました。
この日は主に「感染を防ぐために、受付などの流れをどうするか」という議題で話し合いました(この件の詳細は次のページで後述します)。
話のついで、とトイレの件を軽く持ち出したところ、さとみんとエルザの顔色が変わりました。
「おかしい。もう雪なんて全部溶けてるのに」
「水道管の凍結じゃないんじゃない?別の原因でトイレが使えないのかも」
嫌がるA氏をせっついて、その場で多世代ふれあいセンターの事務所(福祉会館と共通)に電話をかけさせました。
結果。
わかったことは、
寒波のせいではあるが、水道管ではなく、別の箇所が壊れている。
修理はしているが、いつ使用できるかの見通しは立っていない。
17日も、おそらく使用できない。
これまでも散々大波を乗り越えてきましたが、これには心が折れそうでした。
今までの苦労は「自分たちが踏ん張れば、なんとかなる」「これを乗り越えたら、より良いものができる」という気持ちで皆(A氏以外)歯を食いしばってきたのです。
でも、会場の問題は、私たちの努力ではどうにもなりません。
そして、私たちがどれだけ力一杯演奏をしても、お客様の間で「あの公演は、トイレが使えず不便だった」という評価になるでしょう。
悔しくて、やりきれない気持ちになりました。
打ち合わせが終わり、A氏は帰宅し、残ったさとみんとエルザと私とで昼食を取りながら今後のことを話し合っていたら、エルザの携帯が鳴りました。
A氏からの電話でした。
「多世代ふれあいセンターのトイレ、今直った、って、連絡があった。」
トイレ騒動は、ほんの数時間で解決しました。
しかし、もし修理にもっと時間がかかっていたら、と思うと今でも肝が冷える思いです。
照明機材が一部壊れており、電球も切れたまま。
打ち合わせの最中にA氏がたまに、
「会場は、市の管轄だけど、予算が付かないのか、壊れた箇所は修理してくれないし、電球もあちこち切れたまま」
「もちろん今回も、そのままやるしかない」
と、ぼやくことがありました。
この件については照明のKさんがほぼ全部背負い込むことになりました。
時間が飛びますが、当日の朝9時。
出演者が勢揃いした楽屋に、Kさんが神妙な顔つきで入ってきました。
「ちょっと、専門的な話になるのですが…。
照明の操作は、ステージから見て客席の上部、奥のほうの部屋でやるのは、皆さんご存知ですよね。そこに、照明のコントローラーがあります。
照明を操作する機械には通常、『記憶装置』があるんです。
複雑な操作を、パターンとして記憶し、再現できる機能です。
この会場も、ついているんですが、それが壊れていることが、昨日のリハの後に、わかりました。」
「20数個ある、コントローラーのつまみを、僕がひとりで両手の指全部を使って動かすことになります。
ひとつの曲が終わって、すぐに次の曲へ行きたいときに、操作が間に合わず、照明の切り替えが少しだけ遅れるかもしれません。
僕も頑張りますが、どうか皆様のご理解をいただきたいのです。」
Kさんは、舞台照明のプロです。
機材が壊れていること、付かない電球があることで、持てる技術が存分に発揮できず、ずいぶん苦しい思いをされたのではないかと想像します。
もちろん、私たち演者はKさんの説明を理解し、これから始まるKさんの闘いに心の中でエールを送ったのでした。
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