「海の声」の、工工四(くんくんしー)について、続編。
BEGINバージョンの「海の声」の工工四を書き上げるまでと、その工工四の解説。
半年前からリクエストをいただいていました。
こんにちは、宇部沖縄三線愛好会の島袋りりあです。
山口県西部に位置する宇部市で、毎週火曜日に三線を教えております。
今日は、「海の声」の工工四のご紹介です。
今回は、下記の記事の続編です。
「海の声」を弾いてみたいので工工四を書いてもらえませんか?とずいぶん前に生徒さんからリクエストをいただいていました。
でも、なかなか書き出せず…。
えいやっと重い腰を上げたのは3ヶ月くらいあとでした。
それから一気呵成に書き上げた…わけでもなく、休み休み、思い出した時に書いていたらあっという間にさらに2ヶ月が経過。
半年近く、お待たせしてしまいました。
できあがったものは、こちらです。
※この工工四、いきなり弾き始める前に少々解説が必要です。解説を先にお読みになりたい方は、ずずっと下にスクロールしてください。
なぜ、そんなに待っていただくことになったのか、ちょっと言い訳をさせてください。
工工四として読みやすく、わかりやすくするために、随所に工夫を凝らす必要があったのです。
「海の声」を工工四にするために
桐谷健太さんバージョンではなくBEGINバージョンを採用した理由。
BEGINのコアなファンでもない限り、「海の声」と聞いて最初に脳裏に浮かぶのは、海岸で切ない思いを叫ぶ、浦島太郎とその歌声ではないでしょうか。
auのCMのワンシーン。歌っているのは、俳優の桐谷健太さんです。
それもそのはず、このコマーシャルのヒットで、桐谷さんはこの年(2016年)、日本レコード大賞の優秀作品賞を受賞されたのみならず、紅白歌合戦への初出場を果たしておられます。ヒットどころか、ホームランです。
そのおかげで、日本全国の老若男女がこの曲を「桐谷さんの曲として」知ることとなりました。
【参照サイト】 wikipedia:桐谷健太
この曲の作詞は篠原誠さん。元電通のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターです。auの三太郎CMのディレクションをするのみならず、CM曲の作詞も手がけられた、ということですね。
そして、作曲は我らがBEGIN。島袋優(まさる)さん。
残念ながら、私の親戚ではありません。親戚ならよかったんですが(笑)。
日本で一番よく聞かれている、桐谷さんバージョンの「海の声」は、最後の
海の声よ 風の声よ
空の声よ 太陽の声よ
川の声よ 山の声よ
僕の声を 乗せてゆけ
この部分に入る時に、全体の音が半音上がります。つられてこちらの気持ちもグッと、盛り上がりますね。
この、曲の途中で全体の音程が上がる(または下がる)ことを「転調」と言います。
三線は、この、転調が苦手です。
BEGINバージョンには、転調がありません。
ですので、宇部沖縄三線愛好会の工工四では、BEGINバージョンを採用しました。
どの音符をひとマスにするか問題
三線の楽譜、工工四は原稿用紙のようなマス目に漢字の記号(勘所)が書かれています。
ひとマスが一拍です。
この、一拍の長さをどれくらいにするかによって、工工四の読みやすさ、長さがだいぶ変わってきます。
私が書いた海の声工工四は、「八分音符一個が一拍」と数えています。
例として、ほんの冒頭部分だけ、「四分音符一個が一拍」バージョンを書きました。比較してみましょう。
四分音符だと、工工四の長さが半分!
まず、ここで悩みました。
どちらの方が見やすいのか、弾きやすいのか。
休符(○の部分です)が多くて読みにくそうな八分音符バージョン、なんだか寸詰まりで苦しげな四分音符バージョン…。
悩みましたが、歌詞で言うと「風の声にー」の伸ばす部分(「耳すませ」の前)、「五工○」の部分のリズムは四分音符バージョンでは取りにくいだろうな、と考え、八分音符を選びました。
今、両方の工工四を見返してみて、休符の多さと数えにくさを改めて感じ、当時の自分の判断に自信が持てなくなっていますが、まあ作ってしまったものは仕方ないので、そのままで(すみません)。
一行に12マスではキリが悪い。
通常、工工四はマス目が一行につき12個あります。
一行で12拍分ですね。
しかし、この曲は12マスにすると非常に収まりが悪い。なので楽譜(正規に購入したもの)とにらめっこしつつ、16マスの、白紙のマス目をパソコンで作り直すところから始めました。
繰り返しが多くて、しかも不規則!
さらに、民謡ではあまり感じない苦労がありました。
民謡は基本的に
唄持ち(イントロ)
↓
1番&サビ(2番以降も共通のことが多い)
↓
唄持ち
↓
2番(メロディー同じ、歌詞だけ違う)&サビ
↓
唄持ち
↓
3番&サビ
(…終わりまで延々続く)
と、上記のような単純構造になっていることが多いのですが、「海の声」を同じように書くと、
イントロ
↓
サビ
↓
Aメロ
↓
Bメロ
↓
サビ
↓
間奏
↓
Bメロ
↓
大サビ
↓
落ちサビ
↓
アウトロ(後奏)
ややこしい…!
そこを、どう工工四で表現するか。以下、ようやく解説に入ります。
「海の声」工工四の解説です。
文字の色
スクロールしてきた皆さま、お疲れ様でした。
ここから海の声工工四の解説です。
グレーで書かれた文字は、「楽譜にはそう書いてあるけど、弾かなくても大丈夫かも」な記号です。
薄い緑の文字は、「楽譜に書いてないけど、弾いた方が楽かもよ?」という記号です。
弾く順番
上記の「海の声の構成」に、工工四に書いてある矢印や記号を書き足します。
イントロ(繰り返し矢印の通り、二回繰り返す)
↓
サビ(歌詞は1番。青い部分。)
↓
Aメロ(歌詞は1番。青い部分。)
↓
Bメロ(歌詞は1番。青い部分。)
↓(●を辿って、1枚目のサビへ戻る。)
サビ(歌詞は1番と同じだが、薄紫部分。)
↓紫の矢印を辿る。
間奏(紫色の矢印↓の始点から唄わずに弾き、オレンジ色の矢印↓へ!)
↓
Bメロ(オレンジ色の矢印↓を辿った先の、黄色部分の歌詞。オレンジ色で書いた「上中四」を入れるとかっこいい。)
↓(▲を辿って、冒頭近くのサビへ。)
大サビ(歌詞は黄色部分。)
↓(赤い矢印↓を辿るが、4拍休符を入れて)
落ちサビ(歌詞は1番。青い部分。)
↓
アウトロ(後奏)(一番最後の部分)
ぎゃ!ややこしい!!
しかし、これ以上私の能力ではどうしようもなかったので、これで完成とします。
民謡とリズムが違うので、ちょっと苦労する曲です。
ポピュラーな曲なので取っつきやすいかと思いきや、三線の経験が豊富で民謡がバリバリ弾ける人でも、民謡とは使うリズムが違うせいで、ちょっと苦労する感じの曲になっています。
でも、これが弾けたら、カッコいいですよね。
練習あるのみ!
わからないことがあったら、宇部沖縄三線教室へ、火曜日にお越しくださいね〜。
見学一回は無料です(宣伝)。
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