工工四の記号ににんべんが付いている、あの部分。
この記事は、移転する前のブログから転載したものです。
目次
棹の下のほうを使う曲
棹の下のほう、あまり使わないけど使うとかっこいい部分についての解説です。
梅雨空が続きますが、三線、弾いてますかー?
前回の更新から時間があいてしまいました、島袋です。
沖縄曲以外を三線で弾くために、工工四を楽譜から(または耳コピで)書こう、というお題から一旦ドロップアウトして、先週の愛好会で新しくやったことの解説です。
唄がつきものの沖縄曲にしては珍しい、唄わなくていい曲。
昨夜の愛好会でチャレンジしていただいた曲、それは「瀧落菅撹(タチウトゥシスィガガチ)」。どんな曲かは、下記の動画をご参照ください。
おなじみ、宮里英克先生です。調弦は、A#-D#-A#(調子笛の2)です。
もう一つ、こちらも。
惜しむらくは音質が良くないんです。が、テンポに狂いがなく、音程もかなりしっかりした演奏です。ただ、調弦はB-E-B(3)とC-F-C(4)の中間、という不思議な調弦になっています。しかし、一人で弾く分にはそれで何も問題ありません。三本の弦の関係性さえきちんとしていれば、曲は弾けます。
一人で弾く分には、と書いたのは、古典曲(この曲も古典です)は大人数で弾くことがあり、その場合だいたい三線2〜4名、琴1〜2名、太鼓1名、沖縄胡弓1名、笛1名、といった構成になります。この場合は全員がしっかりと調弦を合わせないといけません。そのときに誰(どの楽器)が基準になるか、と言いますと「笛」です。
他の楽器は弦楽器なので弦を緩めたり張ったりすることで調弦が可能なんですが、笛はそのようなことはできません。その上、その場の湿度や温度で音程が変わってしまいます。一番繊細な楽器である笛に合わせて、太鼓以外の全員が調弦を合わせます。
また、笛抜きで演奏する場合は、三線が調弦を決めます。三線奏者の中で一番位の高い人が「(三線のみーぢるだけをテーン、と奏でながら)今日は4ね。」などと指図しますので、皆でささっと合わせます。
閑話休題。
この「瀧落菅撹(タチウトゥシスィガガチ)」は舞踊曲として、また古武道の演舞や獅子舞のバックで演奏されることが多く、三線をやり始めた方なら誰しもが通る道、と言いますか、よく耳にするので自然にやりたくなる曲です。普通、「渡りザウ(ワタリゾウ)」とセットで演奏されます。唄わなくていいので、喉が疲れたときの練習曲としてもおすすめです。
ただし、簡単ではありません。唄わなくていい分、三線は誤魔化しが効きません。
工工四に、見たことがない記号がある!
下の図をご覧ください。
私から三線を教わったことがある方なら、私が常々「記号(漢字)を11個覚えれば、9割の曲は弾ける。『合乙老四上中尺工五六七』、この11個だけだから頑張れ」と初心者に向けて言っているのを聞いたことがおありかと思います。
嘘ではないんです。本調子の調弦を覚えて、三線の構え方を覚える。そして勘所を11個覚えてしまえば、大抵の曲は弾けてしまうんです。
でも、この「瀧落菅撹」は例外の、1割の中に入ってしまう曲なんです。
11個の基本の記号以外の、見たことがない(そもそも読めない)記号たちを詳しく見ていきましょう。
口偏(くちへん)の意味、読み方
勘所一覧図の真ん中付近に、ズームアップ。
口偏が付く記号のみ、赤く色を付けました。
これ、実は瀧落菅撹に出てこないのですが、簡単なので、ついでに説明してしまいます。
口偏が付く記号は、「つくり」部分と同じ音、という意味です。
読み方は、それぞれ「ろじょう」、「ろしゃく」、「ろご」。口偏をカタカナの「ろ」として読んでいます。
「口上(ろじょう)」は「上」と同じ音であり、「口尺(ろしゃく)」は「尺」と同じ音。「口五(ろご)」も同じく「五」と同じ音になります。
普通に棹の上の方を持ちながら弾く場合はわざわざ「上」を弾く際に「口上」を弾くことはありません。効率が悪いですから。しかし、棹の下方を持つ「中位」の曲の場合、「上」の代わりに「口上」を使ったほうが効率よく弾くことができる場合があります(上記リンク先の「梅の香り」がまさにそういう曲です)。
※「口尺」「口五」については、個人的にはほぼ使うことはありません。使うよ、使ったほうが便利だよ、という曲をご存知の方がおられましたらぜひ教えてください!
人偏(にんべん)がついている記号
同じ図の、真ん中より下方にズームアップ(加筆しています)。
さて、瀧落菅撹の工工四にバリバリ出てくるにんべんの記号を見ていきます。これも意味合いと読み方は簡単です。
人偏が付く記号は、「つくり」部分の一オクターブ上の音、という意味です。
読み方は、人偏をカタカナの「い」として読んでいます。ですので、音が低いほうからそれぞれ「いあい」「いおつ」「いろう」「いよん」「いじょう」「いしゃく」「いこう」「いご」。「いなか」は、通常「九」を使います。
この部分、「口上(ろじょう)」と違って、左手の位置が中位程度では届きません。もっと下方に左手をスライドさせて押さえます。
この左手の動きがダイナミックで人気があるんです、瀧落菅撹。もちろんメロディーもドラマチックでこれまたいいんですけれど。
にんべんの勘所を駆使する曲で有名どころではこの「瀧落菅撹」と、新しい民謡の「ヒヤミカチ節」があります。どちらもいずれ弾いてみたい、という熱烈なファンの多い曲です。
かっこいいですよね〜。愛好会にも熱心なファンがおられますので、いずれきちんとやります、この曲。
実際に瀧落菅撹で使うのは、にんべんの記号の中の一部だけ。
瀧落菅撹で使用する「にんべんがつく勘所」だけを赤くしてみました。
ちょっとだけ、減りました。
メロディーが覚えやすい曲ですので、工工四とメロディーとを合わせて同時に覚えるようにしましょう。決して易しい曲ではありませんが、焦らずに、ゆっくりと着実に習得していきましょう。
宮里先生の新しい動画も置いておきますね。24分超えの長い動画ですが、その分、説明が盛りだくさんです。
三線は難しいけれど、唄わない曲ですから、ある意味ラクかもしれません。
大事なことなので、追記。
私(島袋りりあ)がこうして書き記している工工四の記号の定義は、「野村流聲楽譜附工工四」に基づいています。
しかし、この定義とは別の、独自の解釈をした工工四も市販されています。
愛好会でテキストとして使うことも多い「ちんだみ工工四」の「緑本」では、違った定義がなされていますので、お気をつけください。野村流の工工四をお持ちでない方(会員のみなさま)は、島袋までお問い合わせください。
宇部沖縄三線愛好会は、今日も、いつもの場所で、いつもの時間にお待ちしています!!
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