不気味の谷から脱出した話
こちらは、旧「ヅラ生活のすゝめ(zurazura.net)」から加筆修正のうえ、転載した記事です。
まつ毛があるのとないのでは、天地の差があり、大きな谷がある。
テレノイドとは、2015年くらいに大阪大学などが開発した人間型遠隔操作アンドロイド。中途半端に人間と造形が近いためか、「不気味の谷現象」としてネット上を騒然とさせた(特に私が騒いだ。なぜなら、ヅラなしすっぴん状態の私によく似てるんである)。画像検索結果はこちら。クリックする勇気がない方は「スケキヨ」を思い浮かべていただければだいたい正解である。
マツエクのプロに聞きたいことがあった。
娘の学校のPTAでお世話になった、美人の先輩ママさんが、時々マツエクのモデルとしてFacebookのタイムラインに上がる。どう見てもエクステとはわからない、自然な長いまつ毛が美しい切れ長の目を彩り、もう大変なことになっている。が、自分ごときにマツエクなんて…どうせハゲですし…、と心を閉ざしてマツエク欲を抑え込む日々だった。
そんな日々ではあったが、どうしても専門家に聞いてみたいことがあった。
「まつ毛がない人にエクステができるのか」
「眉毛がない場合、何か人工毛を植えるなどの手立てはあるのか」
先輩ママさんの専属のアイデザイナー(マツエクの施術をする専門家)は、彼女の妹さん。腕前はFacebookで見ての通りだし、先輩一家は代々美容師家系で、妹さんもアイデザイナーとしてはサラブレッドかつエリートだ。思い切ってコメント欄から予約を入れた。ドキドキした。上記の質問をする余裕はなかった。
質問するまでの道のりが長い。
予約を入れたらもう俎板の鯉だ、早いところやっておくれやす、と思っていたが、マツエク初心者にはグルー(糊)でアレルギーが出ないかどうか確かめる期間が必要であるらしい。まずはお試しに数本つけて三日程度様子を見ます、とのこと。
実はこの数ヶ月前(2017年の年末くらい)に中国からグルーと人工まつ毛を個人輸入してセルフマツエクに挑戦&挫折した経緯がある(これについてはいずれ別記事にしたい)。グルーの揮発成分からの刺激で涙が止まらなかったことを思い出し、すでに人生のグルー許容量を超えてしまってアレルギーが出まくるんじゃないかと危惧した。
しかし、杞憂であった。アレルギー症状は出ず、三日間のお試し期間のあとすぐに本番の日となった。
人類を「乙女」か「おっさん」かに二分するとしたら、私は完全に「おっさん」側の人間だ。そのおっさんが、勇気を振り絞って見えない壁を乗り越えて、ガチの乙女しか入れないサロンの個室に横たわっているわけだ。緊張して気が遠くなりそうだったが、アイデザイナーの のりちゃんはそんな緊張で固まったおっさん(私です)にも優しくいろんな話を聞かせて、気持ちをほぐしてくださった。
なので、病気の話もできた。
頭部の毛髪と眉毛をすべて失ったこと、もう生えてこないこと。
まつ毛だけは出産後、復活したこと。
そして、思い切って聞いてみた。
—まつ毛がない人もいると思います。そういう人に、マツエクはできますか?また、眉毛が一本もない私のような人に、眉毛を植えるような方法ってありますか?
ありがとう、のりちゃん。
「実は私、ちょうど今、そのような技術がないか探しているところなんです!」と、にっこり微笑みながら答えてくださった。
私は、これまでずっと、おしゃれなピープルとの深い接触をなんとなく避けて生きてきた。円形脱毛症で毛がまったくないんです、うははははー!など若い頃はとてもじゃないが言えなかった。人前でヅラをはぎ取られて右往左往する夢を見て飛び起きるくらい、ヅラバレするのが恐怖だった。
勇気を出して聞いてよかった。心からそう思った。
のりちゃんのお客様の中で、同じように悩んでいる方がおられるそうで、近いうちに上京して医療用のグルーを使った「毛のないところに毛を生やす」技術を見学する予定だとのこと。のりちゃんが天使に見えた。
施術は一時間程度で無事に終わった。その時のウィッグがドレッドヘアーだったこともあり、顔も濃い方がよかろうと、ちょっと濃いめかつ多めにつけてもらった。
私には敷居が高いくらいのとても可愛らしいお部屋だが、心地よい空間だった。整理整頓が隅々まで行き届いており、のりちゃんの人柄も相まって、すっかりリラックスモードになってしまった。
目が赤いのは心地よさのあまり、施術中寝てしまったからである。
マツエク、やってよかった。
さて、その後のマツエクの付け心地は、というと。
学生時代、まつ毛が長い後輩(男)が「俺、よく上下のまつ毛が絡まるんすよね。あ、寝癖もついちゃうんすよ、まつ毛に。」と聞いてもいないのに自慢してきたことを思い出す生活になった。本当に絡まるし、寝癖もつく。また、シャワーの水流をまともに受けると「目が!目が!(重い!)」となる。風が強い日は、まつ毛でも風を感じることができる。
一番嬉しいのは、寝起きの顔が「テレノイド」ではなくなったこと。
以前は朝、鏡を見るのが億劫だったが、マツエク以降鏡を見てはいちいち「おお!」と驚くのが楽しみになった。
今のエクステが取れてきたらまた、行こう。
そして、のりちゃんの上京の成果も聞かないと。
新しい扉が開いた。おら、ワクワクしてきたぞ。
のりちゃんのサロンはこちら、やまさき美容室内。
完全個室、予約制です。
島袋のブログ見ました、と伝えても大丈夫です。
また、のりちゃんは、マツエクだけでなくネイルのプロフェッショナルでもあるんです。すごい。
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