ハゲてることで、人生に影響が出始める
大学に進学し、地元を離れて一人暮らしを始めました。
念願の、長い髪のウィッグも買ってもらいました。これは嬉しかったです。
少人数の大学で、意気揚々と学生生活が始まるはずだったんですが、「死んでもヅラバレしたくない」病がここでも出てしまいまして。
ウィッグって傷むんですよね、丁寧に扱っても。毛先からダメになってくるのです。それを切りながらやり過ごして、もうこれ以上短くできない!という頃に買い換える。
国内メーカーの、高いウィッグをだましだまし切りながら使っても、二年程度で買い替えになります。
買うときは、長い髪のものを買う。そうすると、毎日授業に出てたらバレますよね。
昨日までショートに近いボブだったクラスメイトがいきなりロングになるわけですから。
学校に行けなくなりました。親にも言えず、仕送りをもらいながら学校に行かずにだらだら生活して、結局中退しました。
行きたくて仕方がなかった第一志望の大学で、必死に受験勉強もがんばったのに、残念です。親にも泣かれました。
中退から十年以上経っても、大学に行っている夢を見たものです(ここ十年は夢に出てないので、ある程度心の整理がついたのだと思います)。
自分の見た目にきちんと向き合えてなかったわけです。会社勤めも、やはり同じ理由で続きませんでした。
これは、もしかしたら同じ病気(同じ病気ではなくても、見た目に影響が出る病気)を持つ方々共通の悩みかもしれません。
もちろん、ハゲててもウィッグでもきちんと学校を卒業し、長くお勤めされている方々も多くおられます。
でも、「ウィッグになってしまったから、接客業ではなく事務職に変えた」などという話は、ちらほらと聞こえてきます。この方の場合は、不特定多数のお客様に接するのが、気持ち的にNGになってしまったのだと想像します。
かく言う私も、会社員から沖縄民謡の講師に転身した理由は「毎日同僚や上司と顔をあわせるのがつらい、でも講師なら生徒さんとは二週間に一度お会いするだけですむ」というものでした。ちょっとくらいヘアスタイルが変化していても流してくれるだろう、と。
ハゲが人生を決めてしまう
たまたま講師としての適性があったのか、幸いにもたくさんの生徒さんに囲まれて楽しい日々を過ごさせていただきました。が、そうではないケースが、いくらでもあったはずです。
私が自分で選んだのではなく、ハゲが選んだ自分の人生。
それがうまく行かないとしたら、一体誰の責任なのでしょうか。
ハゲを受け入れず、きちんと向き合わなかった自分の責任?好んでハゲたわけではないのに。
中学生の頃に「一生縁がないだろう」と諦めていた結婚も、運よくご縁に恵まれ、ひとり娘まで授かりました。幸せなことです。
でも、ハゲに人生をなすがままにされていたら、そうではなかったでしょう。
ハゲに恋愛をする権利はない、と自分に巣食うハゲの亡霊に取り憑かれた私が思っていたら、恋愛をすることも、家庭を持つこともなかったのです。そして、そうであってもおかしくないくらい、ハゲに抗うのは大変なことでした。
隙あらば「閉じこもれ、外に出るな。ハゲは醜く、役立たずだ。ハゲには生きている価値はない」と心の中のハゲが囁くのです。
私だけではない、同じ思いをされた方、現在同じ思いに苛まれている方々はきっと世の中におられるはずです。
次で最終ページです。ハゲから人生を取り戻します。